「シミュレーションでわかる
水泳の力学」

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クロール

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平泳ぎ
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平泳ぎ


はじめに
平泳ぎは,他の3泳法(クロール,背泳ぎ,バタフライ)と比べて, まったく異なった泳ぎ方です. 他の3泳法はすべて,基本的に手で水をかき(押し),足はバタ足ですが, 平泳ぎの手は水を押すよりもむしろかき寄せるような動作ですし, 足のキックも足の裏で水をけり出すような動作となります. また,手と足の動作のタイミングも微妙で, 少しでもタイミングがずれると大幅にエネルギーをロスします. そのため,クロールなどとはかなり違ったセンスや筋肉が必要とされます. このことは,クロールが速い選手はバタフライなども速いことが多いですが, クロールと平泳ぎの両方が速い選手はめったにいないことからも, わかると思います.

推進力の出るタイミング
まず「スイム?スワム?スワム!」で平泳ぎを呼び出しましょう. やり方は クロール のときと同じです. 呼び出したら,推進力(赤い線の水から受ける力の前向きの分)が どのタイミングで一番大きくなるか,手と足それぞれについて調べてみましょう. 調べ方もクロールのときと同じです.

どうでしょうか? 手については,4.30かきめあたりで最大になると思います. アニメーションの画面上でマウスをドラッグさせ, スイマーの下からこのタイミングを見てみると, 4.30かきめは,ちょうど,手が一番外側に広がったあたりに対応していることがわかります.

足についてはどうでしょうか? 足については,4.68かきめあたりで,鋭く推進力が出ていることがわかると思います. これは足の横側で水をけり出しているタイミングです.

手と足の推進力の割合
クロールの項で見たように, クロールではほとんどの推進力は手によって出ていました. しかし上で見たように, 平泳ぎでは足でもかなりの推進力が出ていることがわかります. 実際,平泳ぎの推進力は,むしろ足のほうが大きいと言われています. 「スイム?スワム?スワム!」での結果では, 手と足が大体おなじぐらいに見えますが, 足の推進力が少し小さく計算されているかもしれません.

足首の関節のやわらかさの重要さ
平泳ぎはクロールとはかなり異なる泳ぎ方であることを見てきました. そのため,スイマーの体に求められる能力も,平泳ぎでは異なってきます. クロールの足の推進力の項で見たように,クロールでは,足首がぴんと伸びきるような 関節のやわらかさが大切でした. 一方,平泳ぎでは,キックの際に,足の内側でしっかり水をとらえられるような 関節のやわらかさが重要となります.

では「スイム?スワム!スワム!」を使って,具体的に見てみましょう. ソフトを起動して平泳ぎを呼び出し, 「じょうけんをかえてシミュレーションする」をクリックしましょう. そして,右側の条件の中から「足首のやわらかさ(倍)」が見えるようにしてください. そして,下の図のように,スイマーが足をひきつけているタイミングでアニメーションを止め,アニメーションの視点を変えて(アニメーション画面上でマウスを下向きにドラッグします),スイマーの上から見たところにしてください.


足首のやわらかさを変える

上の図のようにできたら, 「足首のやわらかさ」の値をためしに0.0にしてみましょう.

どうでしょうか?足が少し回転したことがわかると思います. 実は,この向きに足を自分で回転させることは,普通はできません. できるような気がするかもしれませんが, それは実は股(こ)関節(「また」の関節)からの回転です. 足首のところから,この方向に回転させることはできないのです. 今,やわらかさの値を0.0にしましたが,この足の角度が 普通の角度です. しかし,実際のスイマーが泳いでいる画像を詳しく見ると, やわらかさを1.0にしたときのように, 足がより開く向きに回転することが知られています. これは,スイマーが水をキックする際に,水から力を受け, その水の力によって,足が開くように少し回転しているのです. 平泳ぎのキックでは,足が開いた方が,より多くの水をけることができます. そのため,この関節のやわらかさは, 平泳ぎにおいては大きな武器となります.

では,この関節のやわらかさでどれぐらい泳ぎが変わるか, 「スイム?スワム!スワム!」で見てみましょう. 値を0.0にして(足首がかたいとして), 「このじょうけんでシミュレーションする!」をクリックしてシミュレーションしてみましょう.

どうでしょうか? 泳ぎの速さが遅くなり,エネルギーの効率もずいぶんと下がってしまいました. また泳いでいる姿勢もずいぶんと悪くなり, おしりが沈んでしまうようになってしまいました. このように,この関節のやわらかさによって, 泳ぎが大きく変わることがわかりました.

~ やってみよう ~
上の例では0.0だけでしたが,0.5や1.5などのそれ以外の値についてもシミュレーションしてみましょう. また,できれば,関節のやわらかさを横軸にして, 泳ぎの速さやエネルギーの効率を縦軸にして,グラフにしてみましょう.

手と足のタイミング
平泳ぎでは,手と足のコンビネーション, つまり両者のタイミングがとても重要です. 「スイム?スワム?スワム!」で見てみるとわかるように, 足は手がかき終わってから引きつけ始め(4.45かきめあたり), 手が前に伸びきったあたりで,足が一番引き付けられます(4.63かきめあたり). その後,キックが始まります. 初心者にありがちなのは,足のタイミングが少し早く, 手をかき終わらないうちから引き付け始め, 手を伸ばしきらないうちからキックしてしまうことです. つまり,手と足を同時に伸ばしてしまうような動作になってしまうことです. これではせっかくのキックの際に体が十分水平になっておらず, キックによる推進力が大幅にむだになってしまいます.

では手と足のタイミングで泳ぎがどのように変わるか, 「スイム?スワム!スワム!」で見てみましょう. ソフトを起動し,平泳ぎを呼び出し, 「じょうけんをかえてシミュレーションする」をクリックします. そして右側の条件の中から, 「キックのタイミング」が見えるようにします. この項目では,右側に行くほど(値が大きくなるほど), 足が手に対して遅れ気味になります. 上で述べたように,足のタイミングを早くしてみましょう. 値を -3 (一番左側)にしてみましょう. 左側の動作のアニメーション画面で, タイミングが変わったことがわかると思います. 手と足を同時に伸ばすような動きになりました. ではこの条件でシミュレーションしてみましょう. 「このじょうけんでシミュレーションする!」をクリックします.

どうでしょうか? 泳ぎの速さも遅くなり,エネルギーの効率も大幅に低くなったことがわかると思います. また,泳ぎ自体も, キックする際に体が寝ていないので, 上向きにキックするような動作になってしまい, かなり不自然なものになってしまいました. このように,平泳ぎでは手と足のタイミングに十分気をつける必要があります.

~ やってみよう ~
上の例では -3 だけでしたが,反対側の 3 や, その他の値についてもシミュレーションしてみましょう. また,できれば,足のタイミングを横軸にして, 泳ぎの速さやエネルギーの効率を縦軸にして,グラフにしてみましょう.

(平泳ぎの項終わり)